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アプリがつなぐ コミュニケーション

  • #ANA X
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vol.

06

ANA X株式会社
デジタルマーケティング部デジタル戦略チーム

酒井 一匡 氏

お客さまの日常に寄り添う存在に。ビジネスモデルの変革を推進するスーパーアプリ。

Story of IDEA

2020年以降、業界がコロナ禍の打撃に襲われる中、航空業界最大手のANAもまた、ビジネスモデルの変革が課題となっていました。 そして2021年春、既存アプリを大幅にリニューアルするスーパーアプリ構想を発表。 グループ全体のサービス認知を高め、顧客のライフタイムバリューを高めるためのプロジェクトをスタートさせました。 航空事業と非航空事業をつなげるコア要素がマイルであると位置付け、「マイルで生活できる世界」を実現するためのアプリを目指した本プロジェクト。フェンリルは、アプリの企画から開発・リリース、またグロースまで、サービスデザインのパートナーとして対応しました。 リリース後、ANA経済圏の構築、拡大に向けて走りはじめたマイレージクラブアプリ。さらなる成長のためミッションに向き合い、取り組みを続けるチームの挑戦をお聞きしました。

プロジェクトへの思い

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プロジェクトへの思い

非日常から日常へ ブランドの接点を拡大する挑戦。
───プロジェクトに参画された当時のミッションについてお聞かせいただけますか

私は元々、アプリを中心としたプロダクトマネジメントに携わっていましたが、ANA Xがスーパーアプリ構想のメンバーを募集していることを知って、チャレンジしたいと思い入社しました。
担当者から話を聞く中で事業自体に魅力を感じましたし、責任範囲が大きい分、プロダクトとしての影響範囲も広く、ドメイン的にも難易度が高い点にやりがいを感じたことが決め手です。

入社したのが、マイレージクラブアプリのリリース2か月前だったので、まずはリリース日に間に合わせることが目の前のミッションでした。

全体的なミッションでいうと、元々はマイル確認という限られた機能だったこのアプリをスーパーアプリに変革することだったので、具体的にどのようにすればお客さまが変化に戸惑わずについて来られるのかということも考えていました。

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───入社直後から中心となって推進する中で、どのような姿勢でプロジェクトに向き合っていましたか?

プロダクトのリリース時には「とりあえずリリースして反応を見る」ことがあります。「とりあえず」の基準があまり高くないプロダクトも多いですが、ANAグループのブランドを考えるとそれは許されないことなので、基準を高く持つことは常に意識していました。高い基準をベースに推進していくことは、私自身の成長にもつながったと感じています。

ANA X自体がまだ新しい会社で、前身の会社はいわゆるIT企業でもなかったので、チームメンバーを牽引することが私個人のミッションでした。自分1人では難しかったと思いますが、フェンリルさんが入ってくれていたことでかなり助けられました。チーム内で専門用語を使いすぎないという基本的なことから、きちんと意図を説明しながら進めてくれたことで、私は他のやるべきことに注力できました。

───さまざまな取り組みの中で、最も注力していたのはどういったところですか?

ANAグループのブランドを考えても、「プロダクトとして美しくなければならない」というのが第一にありました。さらに、安定稼働させながらお出かけを中心とした体験設計をどうつくっていくか、という点にも重心をおいていました。

これまでお客さまとは航空体験を通してのコミュニケーションが中心でしたが、このアプリによってコミュニケーションの幅を広げていくという、これまでのANAグループのメディアではなかったお客さまとの接点へのチャレンジだったので。

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───現時点での達成度はどのくらいだと感じていますか?

アプリの利用者数をはじめ、設定していたKPI以上の結果となり、100点とはいかないものの高いレベルで達成できていると捉えています。一方で、利益面では未だ課題は多いです。お客さまがお金を使ってもよいと思える体験までには到達できていないという認識です。

───利益を生むというビジネスの側面からアプリの役割をどのように考えていますか?

お客さまの中には、ANA経済圏内ではあるものの、本質的に参加はしていない“潜在層”がたくさんいるので、マイレージクラブアプリがその方たちを巻き込むきっかけになると考えています。

アプリならではでいうと、特有の機能があり、飛行機に乗らない人とのコミュニケーションが取りやすいという特徴があります。これはプロダクトをつくっていく上でも大事にしなければならないポイントです。将来的には、まだANAと接点がない人たちのからの利用も期待できますが、まずは潜在層へのアプローチに注力したいので、もう少し先のフェーズになりますね。

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───アプリを成長させていくに当たって難しいと感じていることはどのような部分でしょうか

ANAグループの航空事業は日常から離れていますが、スーパーアプリは日常に近いサービスです。「日常」が本業ではない企業がスーパーアプリをつくるというのは、かなりチャレンジングだと思っています。ユーザーからしてもANAに対するイメージは「飛行機に乗ること」を起点に、非日常に紐づいているので。

他社事例がないものに対して、新しく自分たちで試しながらやっていかなければならないのが、難しくもありおもしろいポイントですね。

───ANAグループはステークホルダーが多いですが、どのような社内調整をされていますか?

プロジェクト開始当初は部署の巻き込みが弱かったので、アプリの世界観が先行して、中身が置いてけぼりになっていたところがありました。他の部署としてもこのプロジェクトにどのように関わるべきか模索していた時期だったので、仕方がなかったのかなとは思っています。
現在はグループ全体が「ANAマイレージクラブアプリの存在価値とは何か」を理解し始めていて、事業部それぞれが「日常の接点として機能させたい」という考えを持っています。
部署ごとの方針や要望を理解しながら、先回りして相談することでポジティブな議論ができていると感じています。

チームで目指す未来

THEME 02

チームで目指す未来

ユーザーの体験価値を向上する 新たなプラットフォームへ。
───パートナーとしてのフェンリルにどのような印象を持っていますか?

まず、単純な受委託の関係性ではないところが良いなと思っています。こちら側のメンバーはITのスペシャリストが揃っているわけではないため、ベンダー側から「もっとこうした方がいい」という一定の助言をもらえる方が合っていると考えています。
フェンリルさんはデザインと開発の両面からそれをしてもらえますし、「言われたことだけをやる」受け身の状態ではないのがありがたいです。

───品質管理でも支援させていただいていますが、所感をお聞かせいただけますか?

チームの方にも直接伝えていますが、フェンリルさんの品質管理体制は素晴らしいといつも思っています。
ANAの品質管理基準はかなり高いので、大小問わずミスには厳格です。ユーザー数も多く、お客さまからの期待値も高いですし、長年応援してくださるファンの方もいらっしゃいます。少しのミスも許されないという中で、大規模な失敗というのはこれまで一度もないですし、多くのユーザーが離れたり悪い口コミが多く集まるといったこともなかったです。
こちら側から細かくハンドリングしていたわけではないですが、自発的に感じ取って取り組んでくれているので安心してお任せできています。ANA側としては品質面の細かな部分を気にせず、「ユーザーの使い勝手」という点だけをチェックできることが本当にありがたいです。

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───中長期構想についてもフェンリルが入らせていただいている経緯について伺えますか?

まず、プロダクトの質を上げるためには、戦略や方向性を考えている側、プロダクト開発側がコミュニケーションをしっかり取るのが大前提だと思っています。そう言った意味でも、フェンリルさんとはとても良い関係性が築けています。
次段階の施策として、外部のコンサル会社に入っていただく選択肢がないわけではないですが、戦略とプロダクト開発が密になっている状況の中で、あえて別の会社に入ってもらう必要もないかなと考えていました。

チーム間でのコミュニケーションがうまくいっていない現場では、「誰かがこう言っていた」という間接的なやりとりや、しばらくして「実はよく分かっていなかった」というような行き違いが起きる傾向にあります。このプロジェクトのチームではそういうことはないと感じていたのもあり、今いるメンバーでやりきるのが最善という判断でユーザー調査も含めてフェンリルさんにお願いしました。

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───2社がひとつのチームとして取り組む難しさはありますか?

あまり感じていないです。「ONE TEAM」を掲げていて、フェンリルさんも含めて「仲間」と捉えているので。当初はとにかく安定稼働を目指して動いていましたが、途中からさまざまなことに挑戦できるようになってきて、よりいっそうチームとして成長していると思います。
ただ、一定のところまで関係性ができたところで、落ち着いてしまっているところもあります。ANA側もフェンリルさん側も、お互いがステージを上げていくタイミングになっているのだと感じています。

ビジネスにつながる施策、設計は私たちの領域ではありますが、開発の視点を持てるフェンリルさんから、運用を含めたプロダクト開発を提案してもらえるとさらに成長していけるのではと感じています。今の関係性を維持しながらレベルアップを続けて、新しい扉を開けていきたいですね。

───プロダクトの今後について、どのような展開を考えていらっしゃいますか?

これまでの取り組みで、ANA経済圏の形をつくること、安定的に稼働することは達成できていると考えています。これからは、ANAに少しでも接点のある方たちにメリット、価値を感じてもらえるようなプロダクトにしていきたいです。

航空事業という強力な商材と他の事業との間に差は生まれてしまいますが、それは問題ではなく、ANAグループとしてのまとまりをどのように出していくかが重要です。旅行やお出かけなどエアラインを起点としながらもユーザーの日常に寄り添い、ANA経済圏の一体感を生んでいくというのが中長期的に取り組むことだと考えています。

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───アプリが社会に届ける価値についての考えをお聞かせください

まず、インフラ事業を持つ企業にしかできないことをやっているのは大きいと思っています。飛行機に乗ってどこかへ行くことは多くの人にとって特別なことかもしれません。ただ、アプリを通して旅と日常との距離を近づけていくことはできるはずです。

「旅」に強いマイレージプログラムとして更に強化を図りながらも、ANAマイレージアプリで日常と旅をつなぎ、お客さまの人生を豊かにするプラットフォーム事業へと進化させていきたいです。ANAグループが築いてきた信頼と安心を軸に、お客さまのデジタルライフを支える存在を目指していきます。

COLUMN Design with Tech

戦略から実行までをシームレスにつなぐ── 「ONE TEAM」が生み出す価値

プロジェクト概要

情勢の変化や顧客の多様化によって、企業が提供するサービス、プロダクトも複雑化しています。ビジネス変革が課題となる中、企業と開発ベンダーとの関係性は、「作って終わり」の請負型から、「戦略実現まで伴走する」共創型のパートナーシップに、価値が見出されつつあります。本コラムでは、「ANAマイレージクラブアプリ」プロジェクトにおける「ONE TEAM」での取り組みを、パートナーの姿勢を通してお伝えします。

開発ベンダーから共創パートナーへ

「企業とベンダー」という関係性が、「アプリの完成」を経て解消されることは少なくありません。ただし、中期経営戦略を見据えたプロジェクトにおいては、企業のビジョンを共有し、共創していくパートナーの存在が重要です。

フェンリルは、ANA X様とのプロジェクトをさらに専門的かつ深化させるため、「AD推進部」として、事業に特化した部門を発足。単なる開発パートナーではなく、戦略フェーズから積極的に関わり、ビジネス戦略とユーザー視点を基に企画構想を支援しています。

支援内容は多岐に渡りますが、経営戦略をアプリの「機能」や「体験」という具体的なプロダクト要件に変換し、戦略から企画に落とし込むなど、中期経営戦略を共創することをミッションとしています。ANAグループのミッションを深く理解し、体制や文化を熟知しているため、「開発」という一点ではなく「共創パートナー」として、フラットな関係性でプロジェクトを推進できています。

AD推進部の発足は、クライアントの組織全体を支援し、共に成長していくという、パートナーとしての姿勢を表すものでもあります。

“ONE TEAM”の実現と体制の深化

このプロジェクトの最大の特徴は、戦略/開発という分断された構造を解消している点にあります。要件、要望に応じて開発を実行する従来のベンダーワークにとどまらず、企画の初期段階から参画することで、サービスの「生まれるところから作るところまで」を包括的に支援しています。

事業に特化した部門の立ち上げにより、ユーザーインタビューやブランド理解など、より理解度を深める取り組みを積極的に行えるようになりました。こうした取り組みが、質の高いものづくりにつながっています。

さらに、お客さま側のエンジニア、デザイナー、マーケティング担当者も加わり、それぞれの専門性を持ち寄って組織されている本プロジェクト。クライアントとパートナーが“一つの組織”として機能する「ONE TEAM」を掲げています。

ブランドを育てる“伴走型”パートナーシップ

ONE TEAMとしての深い関わりは、開発の効率化だけが目的ではありません。技術的な支援を徹底し、お客さま側のメンバーの理解を深めることも、フェンリル側の重要なミッションの一つです。そうすることで、プロジェクト責任者はアプリのクオリティ向上や事業戦略の策定に集中でき、より質の高いプロジェクトの成長につながります。

本プロジェクトの責任者である酒井様は、技術と事業を横断的に牽引されています。グループ内の各事業部、そしてフェンリルとも「膝を突き合わせて話すこと」「これにはどういう意味があるのか」を丁寧に言語化することを重視されており、そのことが、チームの結束力をさらに強めました。

求心力のあるリーダーのもと、フェンリルは「ベンダー」という枠を超え、「事業側のパートナー」として、その推進力とコミュニケーションを補完する役割を果たしています。

そして私たちが最終的に目指すゴールは、「アプリの完成」ではなく、アプリを通してブランドを育て、事業全体の成長へとつなげることだと考えています。

DX推進、ビジネス変革のヒントに

多くの企業では、開発はベンダー任せになりがちです。しかし、成果を出すためには、企業の担当者自身がプロジェクトを自分事として捉え、パートナーと深く連携し、ビジネス的な方針変更にも一緒に並走できる体制を築くことが不可欠です。

ANA X様と共に実践している「ONE TEAM」での共創体制が、他の企業のDX推進やプロダクト開発においても、大きなヒントとなれば幸いです。


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